これでいいはずがない「官僚裁判」

八ツ場裁判、控訴審へ

5月11日(月)、東京地方裁判所にて、利根川水系吾妻川(群馬県)に計画中の八ツ場ダム建設への公金支出差し止めを求める住民訴訟の判決が言い渡されました。

ダムは国の直轄事業であり、橋下大阪府知事が「ぼったくりバー」と発言して共感を呼んだ負担金が都道府県には発生。本体工事に着工する以前の段階で、ここまでの費用総額は8800億円にのぼり、東京都はすでに1280億円(起債利息含む)を支出しています。この訴訟は、八ツ場ダム建設に関係する一都5県で同時に提起されており、東京は最初に判決が出ることから注目度も高く、90人の傍聴席は満席。しかし、2分間のカメラ撮影のあと、裁判長から発せられた結果は、特定の項目について「却下」、その余については「棄却」というもの。原告の全面敗訴となりました。何をどう判断したのかという十分な説明もなく、あっけなく終わったという印象です。

年度の人事異動をはさんでいたので、裁判官は総入れ替え。三権分立とはいえ、裁判官は内閣から任命されるもの。行政の裁量権の大きさを改めて見せつけられ、これまでよく言われてきた「官僚政治」同様、裁判においても「官僚裁判」との意識を強く持ちました。裁判終了後「裁判官は自分の出世のことしか考えていない!」という怒号も飛んでいました。こういう裁判にこそ市民参画をすすめるべきなのでは?

裁判長は「都の水需要増加の予測に不合理な点はなく、都民が治水の利益を受けないとは言えない」と述べ、支出は正当としましたが、建設計画が撤回された大戸川ダムの計画高水量の数値が誤っていたのと同じように、そもそもの基礎となるカスリーン台風級の台風が再来したときの高水流量予測が誤っていることはすでに明らかとなっており、行政がいいかげんな予測をしても許されると認めた不当な判決と言えます。これから控訴審に向け、新たなスタートを切ります。

東京・生活者ネットワークは来る7月の都議会議員選挙において、引続き八ツ場ダム建設反対を訴えていきます。