建物が建っている土地については、通常、区が建物の取り壊し費用を補償した上で所有者が建物を取り壊し、更地にして引き渡すことが原則です。しかし、区は、本件の場合、建物を区の現地事務所として活用できると判断。取り壊し費用を補償することなく、建物と土地を取得しました。これによって区は、①取り壊し費用が発生しなかった②事務所新設の経費が縮減できた、と説明しています。
しかし、①については、スーパー堤防事業用地とあれば、建物はいずれ取り壊す必要があり、取り壊し費用は現状いらなくてもこの先必要となります。また、②については、空地にプレハブなどの簡易事務所を建てるのでも十分であり、ビルを事務所として使用するにしても、耐震にも問題のある築34年の6階建てを購入することに、どれほどの効果が見込めるのか。監査する上においては、取り壊し費用を含むビルの損失補償をした場合と、建物と土地を買い取った場合においての財源効果を比較検討して妥当か否かの判断をし、その結果も付して公表すべきではなかったでしょうか。
監査結果書類を見る限り、所管課の説明がそのまま羅列されている感は否めません。区がすすめようとしているスーパー堤防事業に関しては、どの局面においても、多くの人が納得する合理的な説明責任が果たされていないと感じています。