国のお手本「すくすくスクール」、質と量のバランスはどこへ?

 先月28日、第3回区議会最終日、「すくすくスクール事業条例」が賛成多数で可決されました。*反対6(生活者ネット・区民ひろば・青空・共産党)、賛成35(自民・公明・民主みんな維新・祖国) 生活者ネット、区民ひろば、青空という一人会派の女性議員3人がそれぞれ反対討論を行っています。生活者ネット討論はこちらからどうぞ。 

 江戸川ネットのHPでもすでにお知らせしているとおり、学童クラブ事業は包含しながらも、今回廃止された「学童クラブ事業条例」にあった「児童福祉法の規定に基づき」という重要な文言を削除し、「児童福祉法」の根拠を持たない条例としての成立です。 

  すでに6年生まで希望者全員を受け入れる江戸川区は、「本事業が、国が示す基準にあてはまらないため、これまで実施してきた事業に沿う条例をつくっただけであり、中身は何ら変わらない」ことを強調。しかし、江戸川ネットも継続して指摘しているとおり、これまで実施してきた中身自体が、すくすくスクール事業導入時の説明から大きく変わってきている事実が問題。「学童クラブ事業の部分は変わらない。むしろ良くなる」(当時の区の説明)はずが、学童登録児の補食(おやつ)と麦茶はなくなり、連絡ノートのやりとりも毎日ではなくなるなど、「学童クラブ事業条例」に明記されていた「生活指導」はなし崩しになっていたと言えます。 

 「放課後児童健全育成事業」の設備及び運営については、これまで「望ましい基準」として、厚生労働省のガイドラインに沿ってなされてきており、江東板橋など、すでに条例化していたところもある中、江戸川区は、1964年制定の「学童クラブ事業条例」、また、「すくすくスクール」に関しては、2010年制定の「すくすくスクール事業実施要綱」という内部規程で運用してきていました。江戸川区では今回、半世紀続いた「学童クラブ事業条例」を廃止してしまいましたが、新BOP事業を展開する世田谷区に「学童クラブ条例」ができたのは、2年前のこと。世田谷区は学校選択制もとっておらず、子どもに関わる重要施策への自治体の姿勢に大きな差があることがわかります。

 国が来年から「子ども・子育て新制度」を実施するにあたり、「放課後児童健全育成事業」についても、これまでのガイドラインではなく、児童福祉法及び厚生労働省令を根拠に、各自治体での条例化が求められることに。そこで、江戸川区としては、「すくすくスクール」の事実上の運営に照らし、ここで「児童福祉法の規定」を「根拠としない」ことを謳わざるを得ない状況になったと言えます。一方で、民間事業者向けには、国基準に沿った「江戸川区放課後児童健全育成事業の設備運営基準条例」を同時に制定し、ダブルスタンダードに。  

 「放課後児童健全育成事業設備運営基準条例」制定にあたり、厚生労働省令は、「従うべき基準」と、地域の実情に応じて異なる内容を定めることが許容される「参酌すべき基準」を示しています。本条例の場合、従うべき基準は「職員」についてのみ。具体には、①事業所ごとの支援員設置②支援の単位ごと(概ね40人以下)に2名以上の支援員を配置(1名は補助員に変更可能)③保育士・社会福祉士・高卒等で2年以上児童福祉事業に従事した者・教員免許所持者などで都知事が行う研修を履修したもの、など。ただし③については、付則に、施行日から5年間の経過措置が明記されました。 

 従うべきこの基準について、「すまいるスクール」を実施する品川区では、現在の指導員は保育士資格と教員免許を持つ者が大半であることから、「放課後児童健全育成事業設置運営基準条例」上には国家資格のみを規定し、その他については現状と国の基準を踏まえ、規則で定める、としました。省令が支援単位を「概ね40人」としている部分は参酌基準であり、厚労省の「放課後児童クラブ」と文科省の「放課後子ども教室」を一体的に運営していることから、区独自の基準を設け、具体の人数は規則に委任する、ともしました。 

 杉並区は省令の「おおむね1.65㎡以上/1人」とされる設備基準を条例に謳わず、規則に委任しています。 

 市民側からすれば、規則委任の課題もないわけではありませんが、児童数の多い23区にあって、「放課後児童健全育成事業」を、民間・自治体を問わず、「児童福祉法」と「厚生労働省令」を根拠に実施すべく、知恵を絞っている様子が伺えると言えないでしょうか。 

 「暴力団排除」条項を独自に盛り込んだ国立市もまた規則委任を謳いましたが、付則には「5年をめどに検討を加え、その結果に基いて必要な措置を講ずる」ことも明記。 なお、国立市議会は、「放課後児童健全育成事業設備運営基準条例案」に対し、付帯決議を。

 武蔵野市議会も今回の2つの条例について、決議しています。

 さて、江戸川区議会は、十分な審査を行ったでしょうか?