スーパー堤防は災害対策の要になりえるか?~災害に強い首都「東京」形成ビジョン

今年1月15日、国と都による「災害に強い首都『東京』の形成に向けた連絡会議」が発足。3月26日、9月9日と3回の会議を経て「災害に強い首都『東京』形成ビジョン 中間まとめ(令和2年9月)」が公表されました。9月15日から10月14日まで意見募集がなされています。

会議体の委員名簿には、国と都の幹部の名前がズラリ。

国の「高規格(スーパー)堤防」を、依然「現時点において、越流による決壊を防ぐ唯一の整備手法」とし、「まちづくりと一体」「浸水時の緊急的な避難高台」として、「高台づくり」の切り札と位置づけています。(本文では「国の高規格堤防」「都のスーパー堤防」と使い分けをしています。「スーパー堤防」と最初に名乗ったのは東京都。それぞれ目的、工法等が異なります。)

そして、今年度より、「河川整備計画に高規格堤防の施行の幅を縮尺1/25,000の図面に明示する」とも。高規格堤防事業は自治体のまちづくり事業ありき。そのため、一緒にと手の上がった自治体で行われてきました。国交省主導で施行区域を決められなかった、つまり、治水は二の次であった―。施行者としては、その反省に立ち、変更したいところでしょう。しかし、パートナーとなる自治体、そして何より地域住民にとってはどうでしょうか?

第2回会議に資料として早くも出された「災害に強い首都『東京』の形成に向けた取り組み方策(イメージ)(案)」につき、23区には6月から7月にかけて意見照会がなされました。その中には、「ほとんどが浸水想定区域でかつ小規模住宅密集地に高台まちづくりは現実的でない」「高規格堤防事業の課題、解決策への言及がない」「土地引き渡し後の地盤強度不足や沈下については国が責任を持って対応を」などの意見が。そして、「整備が困難な区間については、予め区域から除外することも検討願う」という区も。

他にも、財政の裏付け根拠法令との整合水害対策としての電源の確保事業範囲内の並行河川の取り扱いなど、住民に身近な政府からは、基本的な具体の問題点が数多く挙げられています。国も都も、こうした質問、疑問に真摯に対峙することがまず必要です。23区意見一覧はこちら

また、江東5区発で注目を集めた「広域避難」も盛り込まれました。しかし、昨年の台風19号の経験から、やはり困難なこと、と明確に意見表明された区長も。同様に感じている区民も多いことでしょう。5区長の共同コメントはこちら

ここに必要なのは地域に暮らす住民の意見です。住民の意見が反映されて初めてみんなのビジョンになるというものです。そして、「住民」とは、区民、都民だけではありません。

予算規模は示されていませんが、東京一極にこのような方策を講じることになれば、大きな問題となっている地方河川の堤防強化をさらに遅らせることにならないか。すべての国民に関わること。国は「国民」からの意見を求めています。

みなさん、意見をどんどん出しましょう。こちらからどうぞ。