今、幼児教育を考えよう②

「おおやた幼保園」視察報告

 11月7日(月)、足立区の「おおやた幼保園」を区議会市民クラブで視察しました。
  幼児教育は、足立区がすすめる教育改革の中でも特に力をいれている分野であり、14年には教育委員会学力向上推進室に幼児教育の専管組織を設置、15年には「あだち幼児教育振興プログラム」が策定され、その具体的な取り組みのひとつとして、この幼保園はできました。人間形成の基礎をつくる最も重要な幼児期の教育を、公立・私立、幼稚園・保育園の枠を超え、家庭や地域と密接に連携しあって、社会全体で教育環境をつくり上げていこうというもの。もちろん、家庭の教育力を高めるための支援も。

  幼保一元化施設「おおやた幼保園」の設置目的は
①幼・保の良い点を取り入れた質の高い育成内容の提供
②保護者のニーズに沿った保育時間の提供
③教育課題は幼・保協同で研究し解決する
以上3つです。制度上は1歳から3歳までを保育所、4、5歳を幼稚園として認可を受けている年齢区分方式。とはいえ、3歳児クラスには幼稚園教諭、4歳児クラスには保育士を配置し、保育の連続性を確保しつつ、教育カリキュラムを織り込む工夫がされています。保育時間は、3歳児までが午前7時半から午後6時半。4歳児からはニーズにあわせて、午前9時から午後2時、午前9時から午後4時、午前7時半から午後6時半の3パターンから選ぶことができます。(ただし、最後の長時間保育は「保育に欠ける」ことが条件)

  画期的なのは、まず保育者の「勤務形態」。幼稚園教諭・保育士が一体となって早番・遅番のローテーションを組んでいます。さらには「財政面での工夫」。幼稚園跡地に一元化施設をつくるにあたっては「建物建設リース」という経済的な手法をとっています。土地は区所有、建物は民間とのリース契約。これにより、普通ならいちどきに億単位の予算が必要なところ、リース代として年2000万円程度の経費で済み、10年間で合計2億1544万円のリース代を支払えば建物も区の財産に。おそらく全国でも初の試みではないでしょうか。また、区内の幼稚園教諭・保育士合同の「すくすくセミナー」を実施、就学前の保育や教育を考える場を共有していますが、これは簡単そうで実はできていないことです。

  「あだち幼児教育振興プログラム」は保育者が主体となってつくったとのこと。現場を熟知する専門家の確かな視点から生まれたプログラムを、その当事者たちが情熱を持って実践する、これも大きな成功の鍵だと感じました。「お金のことが最初にあってはなしえない」「異質の出会いが大事」「区立幼稚園にたくさんあるソフト面の財産をうまく活用すべき」赤坂園長先生のお話で印象に残ったことです。
  区立松江幼稚園の廃園をいとも簡単に決めた江戸川区。大いに学ぶところがありそうです。

(写真は、木のあたたかみに包まれた遊戯室「にじのひろば」)