スーパー堤防、効率的整備を望むのはだれ?

2017年12月14日 01時35分 | カテゴリー: スーパー堤防

事業開始から30年過ぎても、基本形に沿った整備率は、5河川120kmに縮小してなお、わずか3.27km、率にして2.78%。こんなに進まない事業が他にあるのだろうか。この数字が、いかに問題山積の事業かを物語っています。この間、国は手をこまねいていたわけではなく、今回列記された課題等はとうに承知の上で、事業計画書の作成など推進の方策につき、対象自治体あて通知、事業協力要請をしてきています。

事業対象は河川の下流域のみ。都会の人口密集地域であり、堤防高の30倍の幅を確保したり、立ち退きを迫ることが前提の事業が効率的にやれるはずもなく、できるのならとっくにやってきたことでしょう。

フツーならなくなっても致し方ない、こんな事業が、有識者と言われる人々のみによって「効率的な整備」について、たった3回検討され、今後積極的にすすめよということに。現実を直視し、課題に真っ向から向き合えば、そもそも堤防上に住むことは安全なのか、他の有効な堤防強化工法に転換してはどうか、などの意見があってしかるべきですが、河川ムラにその力学は依然ないよう。

なかなか公表されなかった7月の第3回議事録がようやく13日、国交省HPにアップされ、合わせて「高規格堤防の効率的な整備の推進に向けての提言」も公表されました。

「期間と費用が『400年、12兆円』と言われたが、120kmに絞り込んだために期間の前提は変わった」と。しかし、その後も遅々として進まず、このままのペースでは期間はさらに延びて、千年かかる計算です。「コスト縮減」も何度も登場しますが、実は、住民の移転補償などがコストに占める率が高いのもこの事業の特徴です。「一部区間整備や基本形が完成していなくても、堤防の安全性が格段に向上。災害時の避難場所となり、良好な住環境が提供できる」なども根拠のない強弁に過ぎず、逆にその両側を危険にさらす結果になることは自明。時代は移り、社会状況も各段に変化していながら「大規模開発を誘発する仕組みづくり」など、乱暴な理屈が繰り返されています。

「効率」を望むのは施行者側。どんなに効率的であろうと、権利制限を受ける当該住民の反発が強まりこそすれ、賛同など望めず、これまで以上に役割を押し付けられる格好の地方自治体、企業しかりでは? 盛り土も沈下観測も、これからは共同事業者側が施工する方策が示されました。(概要版P3)

住民の安全を守るために堤防がある。自然の猛威は人智を超え、その堤防は、たとえスーパー堤防であろうとも、洪水により被害を受ける可能性をはらむ。だったら、そんな堤防の上に人が住まないようにすることこそ安全対策なのでは? 壊滅的な被害を防ぐだの、避難のための高台を、などと言うならば、水から離れることが鉄則でしょう。人口減少時代。すでにあるまちを壊し、何も堤防の上にまちを新たにつくらなくても。30年前とは明らかに異なる気候変動により、自然災害が激甚化、頻発化する今日、川に隣接した堤防に住むことの方が、万一の時、危険極まりない。こんな単純なハナシ、アタマの良すぎる人たちにはわっかんないのかな~

いっちばん大事な、主権者である国民の意見がひとっつも入っていないことは、河川法の趣旨にも反し、致命的。有識者は、研究等を踏まえ知見を述べる。その意見を吟味して、国民が判断する。こうでなくっちゃ。この先の協議の場が必要ですね。