江戸川区でも来年度から小中の夏季休業短縮へ

果たしてその教育効果は?

 23区では2005年度に葛飾区が初めて導入した夏季休業の短縮を、江戸川区でも来年度から実施することが教育委員会で決定されました。開始時期は2009年度、期間は7月21日から8月24日までの35日間になり、2学期は8月25日からのスタート。現在すでに9区が短縮しています。

 ご存じの通り、江戸川区では夏場の学習環境をよくするため、昨年度、全中学校普通教室へのエアコン設置を完了、今夏は全小学校において同様の工事がすすめられています。冷房化の方針が打ち出された2年前、私たち江戸川ネットは「エアコンに頼るだけではなく、緑のカーテンなど、自然の力で室温を下げる工夫も同時に行なうこと」「環境整備をしたからといって安易に夏季休業の短縮をしないこと」を求めてきました。休業については「同様の考えである」との教育長答弁だったのですが・・。

 今回、このような決定がなされた背景は、①学力向上のため②学習指導要領の完全実施年度(小・2011年度、中・2012年度)に向けての早期対応であるとしています。算数や数学では言葉や数・式・図などを使って論理的に考え、筋道を立てて説明する、また理科では、自分で仮説を立て、観察・実験を行い、考えをレポートにまとめる、小学校5,6年での英語導入など、新たな内容が決まっている中では、確かに授業時間の確保には悩むところです。2006年PISA(OECDの学習到達度調査)の結果では、日本は「数学」10位、「科学」5位に対して「読解力」はベストテン圏外。インターネットやテレビ・ビデオの影響を受けやすい環境にある子どもたちにとって、読解力や論理的な文章力など、他の教科の基礎でもある「国語教育」こそが求められていると思うのですが、指導要領の中身もチグハグな感じです。

 今回の変更により区教委が期待する効果として、①学力向上②子どもに向き合う時間の増加により児童生徒理解の充実、が上げられています。もっともなようですが、たとえば、73の全小学校が夏季休業中に林間学校を終えられないために、7月初めから実施する学校も出てくるなど、正規の授業時間を削った上での夏季休業の短縮という矛盾も出てきます。

「学校教育では味わえない貴重な経験を長い夏休みで」というのが夏季休業の大きな意味であったはず。学力に定評のある北欧をはじめとする諸外国では、昔も今も夏休みは長〜いもの。都内でも、基地の騒音対策としてすでにエアコンが付いていた昭島市では、校長裁量で学校によって違う対応をとっており、短縮校は約半数。他の先行自治体からの効果のほども聞こえてきません。(すぐに出るものではないでしょうが)校長会及びPTA連合会の正副長からは賛成の意見を得たとのことですが、現場の教職員や子どもたちの意見反映はどのようにされたのでしょうか? まずは教員の質の確保や、わかりやすい授業のための改善点などについての検討が十分なされるべきだと考えます。授業時間の確保が日本の学校教育においてそれほど重要なら、国として土曜日の復活についても改めて検討すべきでは?