松江幼稚園の実践を受け継ごう!

閉園式・思い出の会に参加して

式典のあと、屋上からお花の種とメッセージを付けた風船を空に飛ばしました。
式典のあと、屋上からお花の種とメッセージを付けた風船を空に飛ばしました。
 24日(土)、区立松江幼稚園の閉園式、そして思い出の会が執り行われました。昭和29年に区内初、都内でも三番目の区立幼稚園として誕生してから53年、今年度の卒園式をもって園としての幕を閉じることになりました。この間、区のリーダー的存在であるばかりか、文部科学省の指定園として、国の教育課程に関わる研究にも熱心に取り組んできました。

 私も子どもと区立小松川幼稚園に通っていました。あえて私も、というのにはわけがあります。今、家庭の躾や教育力が低下していると言われますが、区立幼稚園は親も共に育つ場だと強く感じたからです。園と保護者の連携が密であるということ、さらに幼児教育のプロである先生方は、子どもはもちろん、さまざまな場面で親にも適切なアドバイスをしてくださいます。松江幼稚園での研究成果が6園で活かされていたのでしょう。

 たとえば、年長に上がるとき「登園時間を守ってください。できれば早く登園して、友達を待つくらいがいいですね」。私は、入学を前にして遅刻をしないことをさらに徹底させるのだろうと、ごく一般的なことと受け止めました。しかし、そのあとの説明に感じ入りました。「年長になると継続した遊びができるようになり、『昨日の続きをしよう』ということになります。一日の始まりの時間に登園していないと、どうしてもあとからその輪の中に入れてもらうことになり、これでは受け身の遊びになってしまい、そういう状況が続くと、自主性が身に付かないということにもなってしまいます」。これは親にはなかなか気がつかないことで、集団教育の専門家ならでは。この話が聞けてよかった、と感謝したものです。

 松江幼稚園の閉園は、都営アパートの取り壊しをするにあたり、その一階に入っていた区立東小松川保育園を松江幼稚園に移転させる、ということに始まりました。都の取り壊しの発表は余りにも突然で関係者は大混乱。議会にも幼稚園存続の陳情が出されました。私たちはさまざまな事情を鑑み「趣旨採択」としましたが、この4月から葛西、新堀に続き「社会福祉法人えどがわ」が運営を担う「東小松川おひさま保育園」として再出発することになっています。区は保育園の民営化をさらに平成20年度2園、21年度3園と増やしていく方針です。民営化方針は間違っているとは思いませんが、どんなに素晴らしいシラバスがあろうとも、やはり教育は現場が命。高い意識と指導力を持ち、幼児教育に情熱を注ぐ先生方の活躍の場が、子どもが増えている中で今回ひとつ減るという事実。さらには保育・教育といったやはり女性たちが主に担ってきた現場には非常勤・臨時職員を増やす体制がとられ、区の非常勤・臨時職員対応の85.5%をもこの分野で占めていることには大きな疑問を感じます。人が人を育てる仕事はいちばん崇高なこと。専門性を持った人たちが意欲を持って働き続けられる、そのことが子どもの健やかな成長につながることをしっかり押さえていきたいと思います。

 形は変わろうとも、親子・友達と共に育つ場、四季折々の行事が経験できる場、自然に親しみ、命の大切さを実感できる場。常に子どもの目線を大切に、子どもが自ら育つ力を最大限伸ばす教育。この松江幼稚園の実践を全域の幼児教育の現場に広げ、受け継いでいきましょう。
「ありがとう、松江幼稚園」